『西遊記~はじまりのはじまり~(2013年)』の続編。
前作では500年ぶりに五行山の封印から解かれた孫悟空が、三蔵と共に取経の旅へと旅立つところまで描かれていました。
本作は続編ながら主要キャストが一新され、とくに三蔵と孫悟空がまるで別人のビジュアルになってしまってて正直とっつきにくさを感じていたけど、冒頭からお目見えするヅラ師匠や妖怪退治のわらべ歌&謎の振り付けを見れば、すぐにチャウ・シンチー・ワールドに引き戻されます。
ストーリはこんな感じ。一行が比丘の国にさしかかると、偽物の魔法を使う九宮真人と国王に迎えられます。お子様な国王を楽しませるため、雑技を披露する羽目になる三蔵と悟空でしたが、お約束どおりのボタンのかけ違いが発生し、広間はパニックに。三蔵は無事にこの国を抜け出すことができるのか?九宮真人の本当の狙いは?という、取経の旅のひとコマを描いた物語。
予想に反して?孫悟空のキャラが秀逸です。まさか主役とは思えない雑な情緒、理由なき粗暴、短気、気まぐれ、でもピンチの時はバッチリ助けてくれて、切り替え早いし憎めない奴。バランスが良くて、すごく魅力的です。演じるケニー・リン氏は見るからにナイスガイなのに、素顔がわからないほどのメイクでアウトローな斉天大聖に変身。惚れたわ~。
もうひとりの主役、三蔵を演じる吴亦凡(クリス・ウー)。この兄ちゃんも元?EXOらしく美少年なのに、上手に三蔵を演じてると思いました。本作の三蔵は前作の草食男子くんとはまた違った雰囲気の人間くささで、理不尽にイライラをぶつけたり、徒弟らと大ゲンカしたあげくブチ切れて体罰を加えたり、美女に出会うとすぐいいカッコしたりと、とりわけ俗物っぽく描かれていて、大むかしの学校の先生とか思い出しちゃいます。マジメくさってると思わせといて実はわりとセコいとこあるみたいな。こういうおじさんいるいる!って納得感ある演技で、満足。いや、クリス氏におじさんは失礼かもしれんが…。
あと忘れてはいけないのが汪铎(ワン・ドゥオ)さん。最近では《陰陽師 晴雅集》での存在感も凄かった超・美男!なんですが。。。彼がカッコイイ時の猪八戒役で、まさかこんなとこに出演されてたんですね~。猪突猛進で女性に(美人ですらない、おばはんでも見境なく)せまる爽やかイケメンがシュールです。どいつもこいつもきっついキャラばかりの画面の中で、一瞬だけふりまかれる清涼剤のようです。まあ、テンション上がるとデロデロのブタさんに変化しちゃうんですけどね。。。
本作では徐克(ツイ・ハーク)監督によって、人間ぽさ溢れながらもブッ飛んだ妖怪たちの活躍と、ある意味自由すぎるCGの幻想世界が出現。特にラストで九宮真人とのラスボス戦になると、まるで反則続きな演出の連続にニヤけてしまうことうけあいです。(ニヤけるを通り越して、怒っちゃう人いるかもしれない。)
本人は出てないけど完全にチャウ・シンチーの世界。どのシーンにも小ギャグが仕込まれ油断ができません。どんなにシリアスな場面でも次の瞬間には、失笑必至のオチに見舞われるので(注、爆笑ではない)。特に後半では、昭和日本のテレビ感だとか、”あの如来神掌”だとか、聞こえてくるお経がなぜか日本語の”なんみょーほーれんげーきょー”だったり、可笑しいやらツッコミ疲れるやらで困るほどです。
やりすぎ!の声も聞こえてくるかもですが、オーディエンスを笑わせたくて、楽しませたくて仕方がないんだなっていう気持ちがびしびし伝わってくる作品で、私は大好きでした。 心が広めのあなたに、ぜひおすすめしたい。


作品情報
原題 《西游伏魔篇》
制作年 2017年 中国映画
時間 108分
制作 チャウ・シンチー(周星驰)
脚本 チャウ・シンチー(周星驰)
リ・スージェン(李思臻)
壮大なる物語の第二章…的な期待は禁物。何も考えずに笑いたい時に。
キャスト
三蔵法師: クリス・ウー(吴亦凡)
孫悟空: ケニー・リン(林更新)
九宮真人: ヤオ・チェン(姚晨)
小善: ジェリー・リン(林允)
猪八戒: ヤン・イーウェイ(杨一威)
ワン・ドゥオ(汪铎)
沙悟浄: メンケ・バータル(孟克巴特尔)